2014/07/03

her 五感で感じるものと言葉が伝えるものは違うこと

人工知能AIに恋しちゃう話『her 世界でひとつの彼女』、観てきました~!!
わりと100%好きな映画でした。
『(500)日のサマー』が好きな人は好きだと思うきっと。

あらすじは、長く付き合ってきた妻と別れた男セオドアが

直感や感情をもつ進化型OS(オペレーティングシステム)に
恋するというお話。

OSのサマンサを声だけで演じたのはスカーレット・ヨハンソン。
声だけでローマ国際映画祭の最優秀女優賞を獲っています。
彼女のセクシーな声は前々から気になっていたけど
かすれ方、ささやき方、ティヒヒヒっていう笑い方、やっぱいい。

映像はInstagramの黄色系フィルターをかけたような
おしゃれな写真でした。とても私好み。

そして一番わたしが感じたことは、
「頭の中はイメージであふれているのに言葉はほんの少ししか伝えられないこと」
言葉というものが、
人間にとって、あるいは人生にとってごくわずかなピースでしかなくて
でも人間にとってとても重要なピースであること。

セオドアがサマンサに語っているとき、
セオドアの頭の中ではたくさんのイメージがフラッシュバックする。
音もなく、断片的に、でも自分の目でみた
あるいは自分がその時に感じていた記憶のイメージたち。

たとえばセオドアがデートした女性について語る時
「彼女はセクシーだったし、僕は寂しかったし、セックスしたかった」って
サマンサに語るんだけど、
その時にセオドアが思い浮かべるのは、
その女性が爪を噛む仕草や目線の動き。
セクシーという言葉はそれを形容するために使うだけで、
彼が知覚するのは「セクシー」という言葉ではなくて、
その動きのひとつひとつ。
「彼女はセクシーだった」で伝えられるものって
セオドアが見て感じたものに似せられるわけがない。

この映画でいちばん印象的だったのは、
そういった頭の中で思い起こされる
音(言葉)のないイメージたちでした。
それは、言葉では伝えきれない、自分だけが体験して感じたもの。

セオドアが中盤に綴る手紙(彼は手紙の代筆業をしている)に
「あなたの世界の見方が好き。
あなたの見る世界を見たい」というフレーズが出てきます。
すごく美しくて感動的な手紙なんだけど、
あの時、わたしはとても寂しく思いました。

だって私たちは言葉を越えて共有したい、
私が感じていることをそっくりそのままイメージしてもらいたいという欲望を
少なからず持っているけれど、それは確実に無理だから。
言葉はほんの少ししか伝えられないから。

セオドアが途中で気づくように
OSとの関係は人間との関係と一緒なのです。
「自分がイライラしている原因を説明せずに
ただ彼女の不安を否定するだけだった」
言葉のうしろにはたくさんのイメージ(人生)があるけど
人と人の間には「言葉」できりとったものしか交換できないから。

頭の中にあふれるイメージに対して言葉に限界があるということを
私はつよく感じたのですが、
同時に、セオドアが手紙の代筆をしているというストーリーで
言葉がいかに人を感動させる(touch)かをも描いてくれます。
(ちょっとサマーに似てるよね、
トムはグリーディングカードのコピーライターだった)

あーもうすごくいろいろ思うところがある。
私は感動的な言葉を紡ぐ才能には恵まれなかったし、
視覚的なイメージにこだわりをもってる方だし、
そっくりそのまま伝えるって事が出来ない。
言葉って本当にむずかしい(わたしの口癖は「言語化失敗」)

「頭の中はイメージであふれている」についてだけど
セオドアがサマンサとセックスもどきをする時、
彼はなにもイメージしなかった(画面はまっくろ)

サマンサと出会う前にそういう系のチャットをするときは
その日にネット見た妊婦ヌードを思い浮かべているのに。

セオドアはその時「君の首筋にキスをして~」とか
視覚的なこといっているのに想像しないってそんなこと可能なのかな。
画面がまっくろですごく印象的だったけれど、
(あれは、きっと他の映画なら顔の見えない
きれいにフィルターや光を編集したイメージを見せそうなシーンだった)
でもなんか逆にすごく気になってしまった。
そんなこと可能なのかな?
目が見えない人、つまり視覚的なイメージを持たない人とかは
どういうふうなんだろう。
視覚的な映像的なイメージに強く影響されて生きている自分を
すごく感じるのでした。

AIに恋しちゃったとかアンドロイドに恋したとか
自分の妄想が現実になったとかその手の映画は数多あるけど
いちばんいい作品だと思います。

あーもう一回見たい。
好きな映画に入りました。
『her 世界でひとつの彼女』公式サイト

2014/07/01

春を背負って 主題歌のよさ

ひさかたぶりの更新です。
今観たい映画がいっぱい!
『her』も観たいし『マレフィセント』も観たいし
『ヴィオレッタ』も観たいしホドロフスキーも観たい…
とか思っていると、ついつい観たものも更新忘れがちです。 

さて公開中の『春を背負って』

木村大作監督が標高三千メートルの山小屋を描きます。
松山ケンイチ演じる主人公は金融トレーダーとして
東京で忙しい生活を送っている。
そこに届いた突然の父の訃報。
直前に父から入っていた留守電には
「また山に登ってこないか」という父の言葉が残っていた。
うんぬん。 

山小屋でお手伝いをするあいちゃん役の蒼井優さん、
そして主題歌、山崎まさよしの『心の手紙』が とても印象深いです。

まず、蒼井優さん。
最初に登場するお通夜で涙をぬぐう姿だけで
私はなぜかもらい泣きしそうになりました。
演技派のなせるわざなのか?それとも私の問題??
縁側での「あ、やっだ~、私ってば本当に勝手ですね」ってとこなど
ラフでゆったりしたところも気負いなく素敵。

蒼井優さんってナチュラルで清らかなイメージが強いですが
本当にいろんな顔を演じられる役者さんなんだろうなと思います。
くそビッチ役とかやってほしい。前やってたかな?

そして主題歌の『心の手紙』山崎まさよし。
くううう、沁みます~~
エンドロールの曲がこんなに気になったのは
『たそがれ清兵衛』の井上陽水以来です。
山崎まさよしって本当にいい声。

ちなみに先週末有楽町でフランス映画祭という映画祭をやっていました。
前々から気になっていたのに、
結局でかけずに終わってしまった。
あっという間に日々は過ぎ去ってしまいますね。