2014/08/30

『365日のシンプルライフ』

フィンランドからやってきた映画『365日のシンプルライフ』
とてもよかったのでご紹介!

監督自身の実体験を基にしたドキュメンタリーbasedの映画です。

主人公のルールは4つ。
1.持ちモノはすべて倉庫に預ける
2.1日に1個だけ倉庫から持ってくる
3.1年間、続ける
4.1年間、何も買わない

全裸からはじまる(!)1年間の実験と、
その間、主人公ペトリのまわりでおこることで、
人生って?モノって?てことを
押し付けがましくなく考えさせてくれる作品です。


テーマがとてもおもしろいでしょう!!
でもそれだけじゃなくて、映像もとてもおしゃれなんです。
監督・脚本・主演のペトリ・ルーッカイネンは
17歳から映像制作の現場にいる方だそうで、
この映画もミュージックビデオみたいな感じ。
BGMは渋いジャズサックスです。おっしゃれ~

ペトリとガールフレンドのシーンが度々あるんだけど、
そこが私のイチオシ!
定点におかれたカメラでふたりの世界がきりとられてて
ペトリのとことん幸せそうな、充足感あふれる顔が超イイ!

やっぱ役者さんじゃないからかな?
ヒトって好きな人といる時こんな顔してるよな~って
にやにやしちゃう自然な感じ。めっちゃよかった。

話めっちゃかわるんですが、
私インテリアとか雑貨とか大好きなんです。
今月号のギンザ(http://magazineworld.jp/ginza/
とか、ポパイとかカーサブルータスとかの
お部屋特集は欠かさず読んでる。
いつか一人暮らししたら素敵なお部屋にするんだッ!と思って。

モノがいっぱいあってコージーなお部屋に憧れるけど、
『365日のシンプルライフ』を見たら
大きな窓と、机だけのシンプルな部屋があったらいいな
って思いました。
てか向こうの家、窓がおっきい!
私も窓が大きなお家に住みたい!!!

大きな窓がある小さな部屋があったら、
窓の反対側の壁は
ギンザで紹介されてた部分壁紙とオープンシェルフを
DIYするんだッ!
夢がとってもふくらむ。いつかね。いつか。


『365日のシンプルライフ』
今日から渋谷ユーロスペースにて!
Bunkamura手前のドンキで左折して
Club Asia/O EASTの方にあがってくとこにある映画館です。
『365日のシンプルライフ』公式サイト


ところで、
3ヶ月更新します!とか自分を縛るのやーめた(笑)
ほぼ2ヶ月ぶりの更新でした。みれたです。
「ブログ読んでるよ~」とか言ってくれてた方々、すみません笑

最近は映画好きとして光栄なことに
映画祭でお手伝いをさせてもらったりして充実しております。
舞台は全然いけてないけど。
世田谷パブリックシアターの『ヒストリー・ボーイズ』
めっちゃ観たいんだけどお金なくてチケット買ってない~><

2014/07/03

her 五感で感じるものと言葉が伝えるものは違うこと

人工知能AIに恋しちゃう話『her 世界でひとつの彼女』、観てきました~!!
わりと100%好きな映画でした。
『(500)日のサマー』が好きな人は好きだと思うきっと。

あらすじは、長く付き合ってきた妻と別れた男セオドアが

直感や感情をもつ進化型OS(オペレーティングシステム)に
恋するというお話。

OSのサマンサを声だけで演じたのはスカーレット・ヨハンソン。
声だけでローマ国際映画祭の最優秀女優賞を獲っています。
彼女のセクシーな声は前々から気になっていたけど
かすれ方、ささやき方、ティヒヒヒっていう笑い方、やっぱいい。

映像はInstagramの黄色系フィルターをかけたような
おしゃれな写真でした。とても私好み。

そして一番わたしが感じたことは、
「頭の中はイメージであふれているのに言葉はほんの少ししか伝えられないこと」
言葉というものが、
人間にとって、あるいは人生にとってごくわずかなピースでしかなくて
でも人間にとってとても重要なピースであること。

セオドアがサマンサに語っているとき、
セオドアの頭の中ではたくさんのイメージがフラッシュバックする。
音もなく、断片的に、でも自分の目でみた
あるいは自分がその時に感じていた記憶のイメージたち。

たとえばセオドアがデートした女性について語る時
「彼女はセクシーだったし、僕は寂しかったし、セックスしたかった」って
サマンサに語るんだけど、
その時にセオドアが思い浮かべるのは、
その女性が爪を噛む仕草や目線の動き。
セクシーという言葉はそれを形容するために使うだけで、
彼が知覚するのは「セクシー」という言葉ではなくて、
その動きのひとつひとつ。
「彼女はセクシーだった」で伝えられるものって
セオドアが見て感じたものに似せられるわけがない。

この映画でいちばん印象的だったのは、
そういった頭の中で思い起こされる
音(言葉)のないイメージたちでした。
それは、言葉では伝えきれない、自分だけが体験して感じたもの。

セオドアが中盤に綴る手紙(彼は手紙の代筆業をしている)に
「あなたの世界の見方が好き。
あなたの見る世界を見たい」というフレーズが出てきます。
すごく美しくて感動的な手紙なんだけど、
あの時、わたしはとても寂しく思いました。

だって私たちは言葉を越えて共有したい、
私が感じていることをそっくりそのままイメージしてもらいたいという欲望を
少なからず持っているけれど、それは確実に無理だから。
言葉はほんの少ししか伝えられないから。

セオドアが途中で気づくように
OSとの関係は人間との関係と一緒なのです。
「自分がイライラしている原因を説明せずに
ただ彼女の不安を否定するだけだった」
言葉のうしろにはたくさんのイメージ(人生)があるけど
人と人の間には「言葉」できりとったものしか交換できないから。

頭の中にあふれるイメージに対して言葉に限界があるということを
私はつよく感じたのですが、
同時に、セオドアが手紙の代筆をしているというストーリーで
言葉がいかに人を感動させる(touch)かをも描いてくれます。
(ちょっとサマーに似てるよね、
トムはグリーディングカードのコピーライターだった)

あーもうすごくいろいろ思うところがある。
私は感動的な言葉を紡ぐ才能には恵まれなかったし、
視覚的なイメージにこだわりをもってる方だし、
そっくりそのまま伝えるって事が出来ない。
言葉って本当にむずかしい(わたしの口癖は「言語化失敗」)

「頭の中はイメージであふれている」についてだけど
セオドアがサマンサとセックスもどきをする時、
彼はなにもイメージしなかった(画面はまっくろ)

サマンサと出会う前にそういう系のチャットをするときは
その日にネット見た妊婦ヌードを思い浮かべているのに。

セオドアはその時「君の首筋にキスをして~」とか
視覚的なこといっているのに想像しないってそんなこと可能なのかな。
画面がまっくろですごく印象的だったけれど、
(あれは、きっと他の映画なら顔の見えない
きれいにフィルターや光を編集したイメージを見せそうなシーンだった)
でもなんか逆にすごく気になってしまった。
そんなこと可能なのかな?
目が見えない人、つまり視覚的なイメージを持たない人とかは
どういうふうなんだろう。
視覚的な映像的なイメージに強く影響されて生きている自分を
すごく感じるのでした。

AIに恋しちゃったとかアンドロイドに恋したとか
自分の妄想が現実になったとかその手の映画は数多あるけど
いちばんいい作品だと思います。

あーもう一回見たい。
好きな映画に入りました。
『her 世界でひとつの彼女』公式サイト

2014/07/01

春を背負って 主題歌のよさ

ひさかたぶりの更新です。
今観たい映画がいっぱい!
『her』も観たいし『マレフィセント』も観たいし
『ヴィオレッタ』も観たいしホドロフスキーも観たい…
とか思っていると、ついつい観たものも更新忘れがちです。 

さて公開中の『春を背負って』

木村大作監督が標高三千メートルの山小屋を描きます。
松山ケンイチ演じる主人公は金融トレーダーとして
東京で忙しい生活を送っている。
そこに届いた突然の父の訃報。
直前に父から入っていた留守電には
「また山に登ってこないか」という父の言葉が残っていた。
うんぬん。 

山小屋でお手伝いをするあいちゃん役の蒼井優さん、
そして主題歌、山崎まさよしの『心の手紙』が とても印象深いです。

まず、蒼井優さん。
最初に登場するお通夜で涙をぬぐう姿だけで
私はなぜかもらい泣きしそうになりました。
演技派のなせるわざなのか?それとも私の問題??
縁側での「あ、やっだ~、私ってば本当に勝手ですね」ってとこなど
ラフでゆったりしたところも気負いなく素敵。

蒼井優さんってナチュラルで清らかなイメージが強いですが
本当にいろんな顔を演じられる役者さんなんだろうなと思います。
くそビッチ役とかやってほしい。前やってたかな?

そして主題歌の『心の手紙』山崎まさよし。
くううう、沁みます~~
エンドロールの曲がこんなに気になったのは
『たそがれ清兵衛』の井上陽水以来です。
山崎まさよしって本当にいい声。

ちなみに先週末有楽町でフランス映画祭という映画祭をやっていました。
前々から気になっていたのに、
結局でかけずに終わってしまった。
あっという間に日々は過ぎ去ってしまいますね。


2014/06/26

アイムソーエキサイテッド 期待を裏切るおバカさ

先週キネカ大森で観た二本目は
ペドロ・アドモドバルの『アイムソーエキサイテッド』

アドモドバルといえば、スペインの映画監督
母親(女性)賛歌の作品で知られるゲイの監督。
ペネロペが主演した『帰郷〈ボルベール〉』、私とても好きです。

最新作はどんな作品だろう?と期待したら
とんでもないおバカゲイムービーでした(笑)

この2~3年でゲイムービー増えたなと体感しているのですが、
いくつか見ている中でもっとも陽気なゲイムービーでした。

機体のトラブルで旋回を続ける飛行機内のビジネスクラス、
乗客は訳あり投資家・SM女王・霊能力がある処女・俳優・怪しげな男エトセトラ。
客室乗務員はゲイが3人。

機内でお酒飲みすぎワロタでした。
飛行機トラブルものだと最近では『フライト』がありましたね。
あれは、アルコール依存症を描いたシリアスな映画でした、
(とてもよかったです)

最初から最後まで拍子抜けするほど
おバカでした。
こういうアドモドバルははじめて。
(全作品みているわけではないのでみてみよう)

『アムソーエキサイテッド』公式サイト


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2014/06/25

エヴァとステファンとすてきな家族 カオス…

1975年のストックホルムを舞台にした
スウェーデン映画『エヴァとステファンとすてきな家族』を観ました。

カオスbutカワイイ!って感じです。

私みれたはスウェーデンが大好きなんです。
カーディガンズみたいな90年代のポップスが大好きで、
大学のプログラムでスウェーデンに一週間滞在して。
今スウェーデンに留学中の友人がとてもセンスがいいこともあって
スウェーデンに強い憧れがあります。

この映画も、強い憧れをもって鑑賞、
ふたをあけたらゲイ・レズ・ヒッピー映画だった!!

でも、正確にいうと物語の展開はヒッピー映画ではなく、
むしろエリザベート母子の登場で
コミューン的集合住宅が資本主義化されていく…

スウェーデンで3人に1人が観たヒット作(公式サイトより)なんですが、
子供もこの映画観たのかな…
スウェーデン、奥深いな…(笑)

タイトルで期待するハートウォーミング・カワイイ映画とは
一癖もふた癖も違いますが、ハッピーな映画ではあります。
映像はとってもcozzyでカワイイ。



2014/06/24

舞台『海辺のカフカ』 赤坂ACTシアター

今日は雷が轟いていて怖いですね!!
いつもは雷が鳴っても平気な私ですが、今日はだいぶビビりました。
というのも昨日赤坂で舞台『海辺のカフカ』を観ていたからです!

「雷に打たれる」っていうのがひとつのキーワードなので、
なんてタイムリーなんだ、とおびえながら雷雨を見上げたわたし。
きっと多くの観客も出演者さんたちも同じことを考えたんじゃないかしら。
 
『海辺のカフカ』
演出:蜷川幸雄
出演:宮沢りえ 藤木直人 古畑新之 鈴木杏 柿澤勇人 木場勝己

蜷川さんの舞台を見るのは初めてだったのですが、
動くショーケースのような舞台セット、照明、音楽、
すべてとても不思議な、村上春樹の世界観をビジュアライズしていました。
セリフも村上春樹の小説とほとんどそのままだった(はず)。

パンフレットを読むと蜷川さんはこんなことを仰っていたようです。
『村上春樹の「行間」を舞台の「空間」に置き換える』
パンフレットに寄稿していたカズオ・イシグロは
「村上春樹と蜷川幸雄がつなぐ世界」という表現もしています。

感想はまず本当にそんな感じ。
『海辺のカフカ』という作品が、本よりも厚みや温かい息をもって
舞台に現れた、という印象でした。

普段テレビで見ている俳優さんが出演されている舞台を見るというのも
ほとんど初めてだったので
(つまり歌舞伎役者とかミュージカル俳優とかではない役者さんを)
キャストについても感想を残したいと思います。

印象的だったのは宮沢りえさん(の細さ!)!!
オープニングから登場する佐伯さん少女時代の
透き通る青さ、はかなさ、すごく素敵でした。
写真のようにケースの中に入って舞台上を廻るのですが、
猫のように滑らかで、美しくて冷たくて、
村上春樹の描く女性(佐伯さんだけじゃなくて、直子とかエトセトラ)
ここに居た~と思いました。

大島さん演じる藤木直人さんも細かった。
カーキのスキニーパンツ細っ!て思いました。

主人公カフカ少年を演じる古畑新之さんは、
googleのCMで「日本のマチュピチュ」に行くあのお団子ヘアの彼です。
本格的な演技ははじめての新人さんですが、
まず、この人いくつなんだ?と思って調べたら23歳!
ちゃんと15歳に見えましたよ~まずそれがとても重要!

カフカ少年は15歳であることが大切だと思うので、
ほかの役者さんよりも舞台慣れしてない感じがあったとしても有り余るぐらい
いいキャスティングだと思います。(笑)

カフカ少年と「旅は道ずれ」にさるさくらを演じる鈴木杏ちゃんが
すごくリラックスした良いお芝居をされていたと思うので、
ふたりの絡みではちょっとセリフ硬いな~と思うところもぱったけど、
そもそもカフカ少年ってそんなくだけた人物じゃないし、
そういう意味でももしかしたら演技うまいのかも。
(演技のうまい下手はよくわからないですが)

とりあえず読み直します『海辺のカフカ』

私は、手放しで村上春樹好きって言う人間ではないのですが、
すごく共感できるフレーズに出会う作家のひとりです。
村上春樹の本は、
浪人時代にめちゃくちゃ落ち込んで、人格がすごく変わった自分を、
どこか投影してしまうんですよね~

『海辺のカフカ』は、そういった自己投影をする作品ではなかったので
あまり印象が濃くなかったのですが、
昨日舞台を観て、自己投影した読書ではなくて
パラレルワールドであったりメタファーについて考えるための読書を
してみたいと思いました。

小説よりも距離をもって作品に接することができるって
舞台のひとつの魅力なのかも。

2014/06/23

私の男 小説の妙か映画の妙か

熊切和嘉監督の『私の男』観てきました~!
原作と比較せずにはいられないので、
・映画を見ようと思っている方
・原作を読もうと思っている方
は以下、各自の判断で読んでください。
映画と小説はまったく別個の作品になったと思います。
映画『私の男』は、美しくておそろしい
小説『私の男』は、まがまがしくて美しい
といった印象。だいぶ印象違います。

でも原作にドキリとした人たちに朗報です。
小説の印象的なシーンはほとんど映像化されています。
 

ではどうしてこんなにも印象が違うのか?

決定的なのは、時間軸の流れを変更したからでしょう。
現在から過去へ、淳吾と花の秘密が徐々にあきらかになっていく原作に対し、
映画は過去から現在へ、二人を追っていく展開。

また、映画では「男女」としての二人がメインです。
原作ではキーとなるお母さんのストーリーはカットされているため
「親子」というタームは存在感が薄くなっています。

この改変は、映画に全部を入れ込んだらゴテゴテしすぎると思うので
すっきりとさせたという点ではすごく良いと思います。
お母さんのくだりが入ってたら「お、おう…」感あったと思うし。
ただ、大塩のおじいちゃんの最後とかは
原作読んでない観客にはどう見えるのかしら?

小説と映画の魅力をそれぞれまとめてみます。

小説『私の男』の魅力は、読んでいくときのゾクゾク感です。
時間軸を遡って明らかにされていく秘密、
複数の視点と視覚的な文章で、
許されない禁忌と損なわれた親子というものを描き出していく様子。

映画『私の男』の魅力は、原作を飛び出した作品であることと音のリアリティ。

音が限られていて、すごくリアルで、エロいし怖い。
台詞も少ないので、数少ない台詞の中で主人公たちの関係がどう変化したのか
とてもよくわかるのもいいと思います。
淳吾の「後悔」のくだりなんかは、
原作を読んだ時の印象にはまったくなかったけど
作品の大切なピースが際立っていました。

原作を飛び出した作品、というのは主人公の印象がまるで違うから。
映画の淳吾は、原作よりもまっとうな普通の人だった。
対して、映画の最後、花はバケモノ感がすごかった…。
テーマの生々しさもさることながら、映像もだいぶ生々しいです。
だからその辺りは要注意。
苦手な人も絶対いるので映画館に誘う相手は気を付けてください。

花高校生時代のラブシーン(って言っていいのか?)の
二階堂ふみはなんかすごかったなあ
原作は「なんかすごいものを読んでしまった」と思ったけど
映画も「なんかやばいものを観てしまった」感がありました。

『私の男』公式ホームページ